『フランケンシュタイン』は本当はどんな話?メアリー・シェリーの小説をやさしく解説
『フランケンシュタイン』は、生命を作り出してそれを見捨てた科学者を描くメアリー・シェリーの1818年の小説です。本当の物語と誕生の経緯、テーマを紹介します。
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』は、イギリスの作家メアリー・シェリーが1818年に発表した小説です。若い科学者ヴィクター・フランケンシュタインが生きた存在を作り出し、そして自分の作ったものから逃げ出す物語です。 首にボルトのある緑色の怪物を思い浮かべる人が多いでしょうが、原作の「怪物」は知性があり、美しい言葉で話し、孤独に深く苦しむ存在です。最初期のSF作品の一つともいわれます。
怪談コンテストから生まれた
この本の誕生の話は、本そのものと同じくらい有名です。1816年の夏、メアリー(当時はメアリー・ゴドウィン)、のちの夫で詩人のパーシー・シェリー、詩人バイロン卿らはジュネーヴ湖のほとりに滞在していました。天気が悪く家にこもっていたとき、バイロンが「それぞれ怪談を書こう」と提案します。 まだ18歳だったメアリーは何日もアイデアが浮かばず悩みましたが、ある夜、半分夢のような鮮明なイメージを見ます。自分で組み立てたものの横にひざまずく学生と、それが動き出す瞬間です。そこから小説が生まれました。
ちなみに、この同じ夏のディオダティ荘での集まりからは、もう一つの名作も生まれました。バイロンの書きかけの吸血鬼の物語をもとに、医師ジョン・ポリドリがのちに『吸血鬼』(1819年)を書いたのです。 一行のあいだでは、電気で生き物の体を動かす「ガルヴァーニ電気」もよく話題にのぼっていました。メアリーは、死体をよみがえらせるという考えについて、ガルヴァーニ電気が「そうしたことの兆しを見せていた」と書いています。
名前のない初版、500部
小説の初版は1818年1月1日、ロンドンのラッキントン、ヒューズ、ハーディング、メイヴァー・アンド・ジョーンズ社から、作者の名を伏せて出版されました。 当時の小説のふつうの形だった三巻本で、刷られたのはわずか500部です。 序文はパーシー・シェリーが書き、本はメアリーの父で哲学者のウィリアム・ゴドウィンにささげられました。 メアリーの名が初めて表に出たのは、1821年にジュール・サラダンが出したフランス語訳でした。英語版では1823年8月11日の第二版で、ようやく扉に名前が記されます。 1831年10月31日には一巻本の普及版が出ました。このときメアリーは文章に大きく手を入れ、物語の過激さをやわらげるとともに、新しい序文を加えています。
賛否の書評と、舞台での大当たり
出版当時の評価は割れました。ウォルター・スコットは雑誌の書評で、作者が並はずれた詩的想像力を見せる「驚くべき物語」とたたえましたが、怪物が言葉を覚えていく過程にはあまり納得していませんでした。 一方、匿名で書いたジョン・ウィルソン・クローカーは「恐ろしくおぞましいばかげた話の寄せ集め」と酷評しつつも、作者に本物の構想力と言葉の力があることは認めています。 人気に火がついたのは舞台でした。1823年、リチャード・ブリンズリー・ピークの劇『思い上がり、あるいはフランケンシュタインの運命』が、ロンドンのイングリッシュ・オペラ・ハウスで37回上演されます。8月29日に観劇したメアリーは、自分が有名になっていたことに気づいたと書き残しました。 映画になったのはさらに後で、最初の映画化は1910年のエジソン社の作品です。 作家ブライアン・オールディスは、主人公が自分の意思で実験室での研究に向かう点を挙げて、これを最初の本格的なSF小説だと論じました。
あらすじ
物語は北極を探検するロバート・ウォルトンの手紙の形で語られます。彼は氷の上で疲れ果てたヴィクターと出会い、その身の上話を聞きます。インゴルシュタットの学生だったヴィクターは生命の秘密を解き明かすことに取りつかれ、何か月もの作業の末、集めた部分で作った体に命を吹き込みました。 しかしその姿に恐れをなして逃げ出し、被造物をひとり置き去りにします。
見る人すべてに拒まれた被造物は、ある小屋のそばに隠れ、一家の暮らしをのぞきながらひそかに言葉と読み書きを覚えます。やさしさを期待して姿を見せると、暴力で追い払われてしまいます。 怒りと絶望の中で、被造物は生みの親に牙をむきます。ヴィクターの幼い弟を殺し、自分のために伴侶を作ってほしいと迫り、ヴィクターが作りかけの二体目を壊すと、彼の友人と花嫁に恐ろしい復讐をします。ヴィクターは被造物を追って北極まで行き、そこで力尽き、被造物は悲しみを抱えて闇の中へ消えていきます。
本当の怪物はだれか
この本は、くり返しこの問いを投げかけます。ヴィクターは命を与えながら責任を取らず、被造物は悪事を働きながらも、不幸と拒絶が自分をこうしたのだとはっきり語ります。 読み終えたとき、生みの親より被造物に同情する読者が少なくありません。作った者は作ったものに何を負うのか。科学が責任より先に進んだら何が起きるのか。今も古びない問いです。
よくある勘違い
原作で「フランケンシュタイン」は科学者の名前で、被造物には名前がありません。 1931年の映画などで怪物があまりに有名になり、今では多くの人が怪物の名前だと思っています。
フランケンシュタインで覚える英語表現
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| play God | 神のようにふるまう | Some say gene editing is playing God. |
| a Frankenstein's monster | 作り手に背く産物 | The app became a Frankenstein's monster. |
| come to life | 生き生きと動き出す | The city comes to life at night. |
| an outcast | のけ者 | He felt like an outcast at school. |
| take responsibility | 責任を取る | You must take responsibility for your work. |
練習問題: 手に負えなくなった計画について、「a Frankenstein's monster」「take responsibility」を使って英語で三文書いてみましょう。