シェイクスピア『テンペスト』のあらすじは?魔法の島で選ばれた復讐より赦し

弟に地位を奪われた魔法使いプロスペローが嵐を起こし、仇を島へ招き寄せる。『テンペスト(あらし)』のあらすじと有名な台詞、読みどころを解説します。

『テンペスト』は、弟に大公の地位を奪われて孤島に流れ着いた魔法使いプロスペローが、魔法で嵐を起こして仇の一行を島へ招き寄せ、最後には彼らを赦す物語です。 「テンペスト」は「嵐」という意味で、日本では『あらし』の題名でも上演されてきました。 シェイクスピアが単独で書いた最後の作品といわれ、彼の作品の中でも人気の高い一作です。

物語の前に起きていたこと

劇が始まる十二年前、プロスペローはミラノ大公で、優れた魔法使いでもありました。ところが弟アントーニオがナポリ王アロンゾーの助けを借りて地位を奪い、プロスペローは幼い娘ミランダを連れて小舟で逃げ、遠い島にたどり着きます。 二人はその島で、魔法と学問を研究しながら暮らしてきました。

島にはもともと、怪物のように描かれるキャリバンが住んでいました。プロスペローは魔法でキャリバンを従わせ、さらに空気の精エアリエルを解放して、自分に仕えさせます。 キャリバンの母は島に住んでいた魔女シコラクスで、エアリエルを松の木の裂け目に閉じ込めていました。その木を開いてエアリエルを救い出したのがプロスペローの術だったのです。

あらすじ

ナポリ王アロンゾー、ミラノ大公アントーニオらを乗せた船が大嵐に遭って難破し、一行は絶海の孤島に流れ着きます。この嵐は、プロスペローが復讐のために手下のエアリエルに命じて起こした魔法によるものでした。

王の一行とはぐれたナポリ王子ファーディナンドは、プロスペローの思惑どおりミランダに出会い、二人はひと目で恋に落ちます。プロスペローの課した試練を乗り越えたファーディナンドは、ミランダとの結婚を許されます。

一方、さらなる出世をねらうアントーニオは王の弟セバスチャンをそそのかして王の殺害を企てます。島に住むキャリバンも、流れ着いた王の執事と道化師を味方につけてプロスペローを殺そうとします。しかし、どちらの計画もエアリエルの力で未遂に終わります。

婚約を祝う場面では、精霊たちが女神ジュノー、ケレス、アイリスに扮して仮面劇を演じますが、プロスペローは自分の命をねらう企みを思い出して劇を途中で打ち切ります。 魔法で錯乱状態になったアロンゾー一行を前に、プロスペローはさらなる復讐を思いとどまり、過去の罪を悔い改めさせて赦すことを決めます。一同は和解し、ナポリで結婚式を挙げることになりました。

魔法の力を捨て、エアリエルを自由にしたプロスペローは、最後に観客に語りかけます。自分を島にとどめるのもナポリへ帰すのも観客の気持ち次第だから、どうか拍手で縛めを解いて自由にしてほしい、と。

いつ、何をもとに書かれたか

初演の日ははっきりしていませんが、1611年11月1日に宮廷で上演された記録が残っていて、これが現存する最初の上演記録です。1623年に出版された作品集ファースト・フォリオでは、巻頭に収められています。 直接の出典は特定されていませんが、1609年にバミューダ諸島沖でイギリスの船が遭難した事件や、モンテーニュのエッセイ「人喰い人種について」などの影響が指摘されています。

なお、単独で書いた最後の作品とはいえ、シェイクスピアはこの後もジョン・フレッチャーとの共作で『ヘンリー八世』などを書いています。

有名な台詞

第4幕で、仮面劇を打ち切ったプロスペローは、この世のすべてはいずれ消え去り、私たちは夢と同じ糸で織られている、と語ります。英語の原文「We are such stuff as dreams are made on」は、今もよく引用される一節です。

第5幕で生まれて初めて大勢の人間を目にしたミランダは、「ああ、すばらしき新世界」と叫びます。オルダス・ハクスリーの小説『すばらしい新世界』の題名は、この台詞から取られています。 同じ幕でプロスペローが「この荒々しい魔法を今日限り捨てよう」と語る独白は、シェイクスピア自身の筆を置く宣言とも解釈されてきました。

ロマンス劇とキャリバン

『テンペスト』は、シェイクスピアの「ロマンス劇」の代表作の一つに数えられます。ここでいうロマンスは恋愛劇という意味ではなく、魔法のような人知を超えた力が大きな役割を果たす、現実離れした空想の物語を指します。 また、時間・場所・筋の統一を求める古典主義の「三一致の法則」を守った、シェイクスピア唯一の戯曲でもあります。

近年とくに注目されているのがキャリバンです。復讐から和解と解放へ向かう物語の中で、キャリバンだけは人々にあざけられ続け、誰からも赦されません。そのため、西洋文明と植民地の関係を象徴する存在として、文学研究で大きな注目を集めています。 プロスペローは寛大な父なのか、最後まで島を支配する支配者なのか。読むたびに答えが変わる作品です。

魔法の島はどこにあるのか

物語の島は、チュニスからナポリへ向かう船が通りかかる場所なので、本来は地中海にあるはずです。ところが、エアリエルがバミューダに触れる台詞や、実際のシー・ベンチャー号の難破との関係から、北大西洋の島として読まれることも少なくありません。 キャリバンの母シコラクスが信じる神セテボスの名は南アメリカに由来し、ゴンザーローの理想郷の話はモンテーニュの「人喰い人種について」から来ています。こうした要素が、新大陸を舞台に重ねる読み方を後押ししてきました。

1623年11月8日、出版業者エドワード・ブラウントが、シェイクスピアのほかの15作品とともに『テンペスト』を書籍出版業組合の登録簿に記載しました。 日本では坪内逍遥の「テムペスト(颶風)」(1915年)以来、福田恆存訳の『あらし』、小田島雄志訳の『テンペスト』など、数多くの翻訳が出ています。

『テンペスト』で学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
水に流す 過去のことをなかったことにする 昔のけんかは水に流そう。
恩を仇で返す 受けた恩に悪い行いで報いる 世話になった人に恩を仇で返すな。
嵐の前の静けさ 大事件の前の不気味な静けさ 会議室は嵐の前の静けさだった。
一目ぼれ ひと目見て好きになること 二人は一目ぼれだったそうだ。
手を引く 関わるのをやめる 彼はその計画から手を引いた。

練習: 「水に流す」と「手を引く」を使って、誰かを許した経験について三文書いてみましょう。

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