『マクベス』をやさしく読む:魔女の予言、野心、血にまみれたスコットランド王の座

『マクベス』は、魔女の予言を聞いた将軍が王を殺して王位を奪い、さらに罪を重ねていくシェイクスピアの悲劇です。筋、マクベス夫人、名せりふを紹介します。

『マクベス』は、ウィリアム・シェイクスピアの悲劇で、1606年ごろに初演されたと考えられています。勇敢なスコットランドの将軍マクベスが、三人の魔女から「やがて王になる」という予言を聞き、自分の野心と妻にせき立てられてダンカン王を殺して王位を奪い、それを守るためにさらに殺人を重ねて破滅していく物語です。 シェイクスピアの悲劇の中でもとくに短く、とくに暗い作品で、今も上演回数の多い劇の一つです。

物語のもと

シェイクスピアは、イングランド・スコットランド・アイルランドの歴史をまとめた『ホリンシェッド年代記』(1587年)にあるマクベス、マクダフ、ダンカンの記述をもとにしました。ただし劇の出来事は、実在したスコットランド王マクベスの歴史とは大きく違います。 何年もの出来事を数日に縮め、場面を作り、はるかに血なまぐさく超自然的な物語にしたのです。実際のマクベスは長くスコットランドを治めましたが、舞台のマクベスは、野心が人をどう壊すかを描いた肖像です。

ジェームズ王と火薬陰謀事件

劇の背景には、当時の国王ジェームズ1世の存在があります。バンクォーや魔女たち、マクベス夫人が初めて記録に現れるのは、1527年のヘクター・ボイスの歴史書でした。 シェイクスピアの時代、バンクォーはジェームズ王のスチュアート家の祖先と考えられていましたが、19世紀になって実在しない人物だとわかりました。 魔女たちの集まりの描き方には、1597年に初めて出版されたジェームズ王の著書『悪魔学』の影響があると考えられています。 また門番が語る「二枚舌の男」のせりふは、1605年の火薬陰謀事件に関わって1606年3月28日に裁判にかけられ、5月3日に処刑されたイエズス会士ヘンリー・ガーネットを当てこすったものだとされます。

『ファースト・フォリオ』だけが残した台本

『マクベス』が初めて印刷されたのは1623年の『ファースト・フォリオ』でした。それより前の版は残っていないため、この本が台本の唯一の出どころです。 『オセロー』や『リア王』より千行以上短く、もとの台本を縮めたり並べ替えたりしたものではないかと考える研究者もいます。 フォリオには歌の指示が2か所ありますが歌詞はなく、その歌詞はトマス・ミドルトンの劇『魔女』の中に見つかります。

魔女の予言

雷鳴と稲妻のなか、三人の魔女がマクベスに会おうと相談する場面で劇は始まります。反乱軍に勝って戻る途中のマクベスと仲間の将軍バンクォーは、荒野で魔女たちに出会います。魔女はマクベスを「グラームズの領主」「コーダーの領主」「いずれ王になるお方」と呼び、バンクォーには「王にはならないが王の父祖となる」と告げます。 直後、ダンカン王がマクベスをコーダーの領主にしたという知らせが届きます。予言の一つが当たり、王冠への思いがマクベスの心をとらえてしまいます。

夜の殺人

手紙で知らせを受けたマクベス夫人はすぐに計画を立てます。ダンカンが城に泊まりに来ると、夫人はためらう夫をあざけり、決行させます。その夜、血に染まった短剣の幻を見たマクベスは、眠っている王を刺し殺します。 朝になって王の死が見つかり、王子たちは身の危険を感じて逃げ、マクベスが王になります。

罪が罪を呼ぶ

マクベスの心は休まりません。魔女がバンクォーの子孫に王位を約束したことを思い出し、刺客を雇ってバンクォーと息子フリーアンスを殺させます。バンクォーは死にますが、フリーアンスは逃げのびます。 宴会ではバンクォーの亡霊がマクベスの席に座り、それが見えるのはマクベスだけ。おびえる王の姿に客たちは驚きます。ふたたび魔女をたずねると、「マクダフに気をつけよ」と言われる一方、「女から生まれた者にはおまえは倒せない」「バーナムの森がダンシネインの丘に来るまで敗れない」とも告げられます。安心したマクベスは、マクダフの妻子を皆殺しにさせます。

マクベス夫人の崩壊と結末

かつて夫より強かったマクベス夫人は、罪の意識に押しつぶされます。有名な夢遊病の場面では、見えない血を手から洗い落とそうとします。 やがて夫人は亡くなり、知らせを聞いたマクベスは「明日、また明日、また明日」と、人生をむなしい響きと怒りに満ちた物語にたとえます。ダンカンの息子マルカムとマクダフの軍が攻めてくると、兵士たちはバーナムの森の枝で身を隠し、森が動いて見えます。最後にマクダフは、自分は母の腹を裂いて取り出された、ふつうに生まれた者ではないと明かし、マクベスを討ちます。 予言はすべて当たっていたのです。マクベスが思っていたのとはまったく違う形で。

舞台の歴史と「スコットランドの劇」

シェイクスピアの生きていた時代の上演を見た記録は一つだけで、1610年4月20日にグローブ座で観劇したサイモン・フォーマンが書き残したものです。 王政復古の1660年からおよそ80年間は、魔女の場面や歌を増やしたダヴェナントの改作が舞台を独占しました。 1849年には、ニューヨークで二つの『マクベス』の上演をめぐる対立からアスター・プレイス暴動が起き、31人が亡くなっています。 劇場ではこの作品の名前を口にすると不幸が起きるとして「スコットランドの劇」と呼ぶ迷信がありますが、本物の魔女が劇を呪ったという話に歴史的な証拠はありません。 俳優のドナルド・シンデンは、客の入りが悪い演目の代わりに確実に人を呼べる劇として、レパートリー劇団でこの呼び名が生まれたのだと説明しました。

マクベスで覚える英語表現

表現 意味 例文
vaulting ambition 行きすぎた野心 His vaulting ambition ruined him.
a Lady Macbeth 人を悪事にけしかける女性 She was a real Lady Macbeth.
out, damned spot! 消えろ、いまいましいしみ Out, damned spot!
sound and fury 騒ぐだけで中身がない It was all sound and fury.
screw your courage to the sticking place 勇気をふるい起こす Screw your courage and ask.

練習問題: 野心が人を助けたり傷つけたりした話を、「vaulting ambition」「sound and fury」を使って英語で三文書いてみましょう。

이 인물로 언어 배우기

テーマ別に読む