ペルセポネはなぜザクロを食べたのか?冥界の女王と四季の神話

冥界から帰る直前にザクロを口にしたペルセポネは、毎年冥府へ戻ることになりました。神話のあらすじと四季の由来、冥界の女王としての姿を解説します。

ペルセポネがザクロを食べたのは、冥界から解放される直前にハーデースがザクロの実を差し出し、空腹に耐えかねて数粒を口にしてしまったからだと語られます。 ハーデースがわざとだまして食べさせた、と語る伝承もあります。 冥界の食べ物を食べた者は冥界に属するという神々の取り決めがあったため、彼女は一年の三分の一(または半分)を冥府で過ごすことになりました。 この取り決めが、季節の移り変わりの由来として語られています。

ペルセポネとはどんな女神か

ペルセポネはギリシア神話に登場する冥界の女王で、ゼウスと豊穣の女神デーメーテールの娘です。 しばしば「乙女」を意味するコレーとも呼ばれ、地上にいた時はコレー、冥界に入ってからはペルセポネーと呼ばれたともいわれます。 ローマ神話ではプロセルピナと呼ばれ、春をもたらす農耕の女神とされました。 日本語では長母音を省いてペルセポネと書くことが多く、ペルセフォネという表記も見られます。

春の若い女神でありながら、死者の国の王妃でもある。この二つの顔をつなぐのが、これから見る「略奪」と「ザクロ」の物語です。

花畑からの略奪

ある日、ペルセポネはニュムペーたちと野原で花を摘んでいました。ひときわ美しい水仙を摘もうと仲間から離れた瞬間、大地が裂け、黒い馬に乗ったハーデースが現れて、彼女を冥府へ連れ去りました。 『デーメーテール讃歌』によれば、ハーデースは美しいペルセポネに恋をしており、母のデーメーテールが許すはずがないと考えたゼウスが、この連れ去りを認めていました。 父親が母親に黙って娘の結婚を決めてしまったわけです。

略奪の舞台については土地ごとに言い伝えが異なります。シチリアの人々はエンナ近くの草原だと信じ、クレタの人々は自分たちの島こそ舞台だと考えました。後の伝承ではアテナイやエレウシースの近くとされることもあります。 古い讃歌が挙げる地名ニューサは、実在しない伝説上の土地だった可能性が高いといわれます。

母デーメーテールの怒り

娘の叫び声を聞いたデーメーテールは、松明を手に地上を探し回りました。十日目に月の女神ヘカテーと出会い、二柱で太陽神ヘーリオスを訪ねて、ハーデースが娘を連れ去ったことを知ります。 ゼウスに抗議しても取り合ってもらえなかったため、デーメーテールはオリュンポスを去り、大地に実りをもたらすのをやめてしまいました。

作物が育たず人々が飢えると、困ったのは神々も同じでした。飢えた人々の叫びと他の神々の訴えに押されて、ゼウスはついにハーデースへ、ペルセポネを返すよう命じます。 神話はゼウスが改心したとは語りません。世界から食べ物が消えたことが、彼を動かしたのです。

ザクロの粒と冥界の決まり

ゼウスの使いとしてヘルメースが来ると、ハーデースはペルセポネを解放しました。その際に差し出したのがザクロの実です。丁重に扱われていたことと空腹から、ペルセポネは十二粒のうち四粒(または六粒)を食べてしまいました。

母のもとへ帰った彼女がそのことを告げると、デーメーテールは無理やり食べさせられたのだと主張しましたが、神々の取り決めを覆すことはできませんでした。 こうしてペルセポネは、食べた粒の数に応じて一年の一部を冥府で過ごす王妃となりました。後のローマの作家オウィディウスやヒュギーヌスでは、その期間は一年の半分になっています。 本によって「四か月」と「六か月」が混在するのはこのためです。

四季の始まりの物語

娘が冥界にいる間、デーメーテールは地上に実りをもたらすのをやめます。これが冬(あるいは夏)の始まりとされ、農作物の消長はこの神話で説明されてきました。 反対にペルセポネが地上へ戻ると、母の喜びが大地に満ちあふれ、春が訪れます。そのためペルセポネは春の女神ともされます。

研究者は、ここに穀物そのものの一生を見ています。種は蒔かれると土の中に消え、しばらく隠れたあと芽を出し、実って収穫される。ペルセポネの往復は、その農の一年を母と娘と夫の物語に置き換えたものだというのです。

地上へ戻る場面は古代の壺絵にも残っています。メトロポリタン美術館が所蔵するアッティカ赤絵式のクラーテールには、ヘカテーとヘルメースに導かれて地面の裂け目から地上へ戻るペルセポネの姿が描かれています。 地上で娘と再会したデーメーテールは、こうして大地の巡りを新たにするのです。

冥界の女王としての顔

強制的にハーデースの妻にされたペルセポネですが、やがてその立場を受け入れ、神話では夫のそばにいる場面が多くなります。 ハーデースの恋人だったニュムペーのメンテーを厳しく罰したという話もあり、別の伝承ではメンテーを踏みつけてミントに変えたのはペルセポネだったとされます。

竪琴の名手オルペウスが亡き妻エウリュディケーを取り戻しに冥界へ下った時、その音楽に心を動かされたペルセポネは、夫を説得して妻を連れ帰ることを許しました。 美少年アドーニスを深く愛し、ゼウスの許しを得て一年の三分の一を彼とともに過ごしたという話も伝わっています。 ここでもまた、一年が分けられているのが印象的です。

エレウシースの秘儀

ペルセポネの物語にもとづくエレウシースの秘儀は、入信者に死後の安寧を約束するものでした。 毎年冥界から戻ってくる彼女の姿は不死の象徴となり、古代の石棺にもたびたび描かれました。 ザクロ数粒の物語は、闇に沈んだものがまた光のもとへ戻るという希望の物語でもあったのです。

ペルセポネで学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
後戻りできない 元の状態に戻れない 一度決めたら、もう後戻りできない。
板挟みになる 二つの立場の間で困る 家族と仕事の板挟みになる。
折り合いをつける 互いに譲って解決する 両親と話し合って折り合いをつけた。
心を動かされる 深く感動する その歌に心を動かされた。
一からやり直す 最初から始め直す 春から一からやり直したい。

練習: 二つの場所や立場の間で迷った経験について、「板挟みになる」と「折り合いをつける」を使って三文書いてみましょう。

ペルセポネで外国語を学ぶ

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