アルセーヌ・ルパンとは?怪盗紳士の素顔と「エルロック・ショルメ」との対決

モーリス・ルブランが生んだ怪盗紳士アルセーヌ・ルパン。変装の名人の人物像、ホームズとの対決が「ショルメ」になった理由、日本とのつながりまで解説します。

アルセーヌ・ルパンは、フランスの小説家モーリス・ルブランが書いた推理・冒険小説「アルセーヌ・ルパンシリーズ」の主人公の怪盗です。 1905年に雑誌『ジュ・セ・トゥ』に載った短編「アルセーヌ・ルパンの逮捕」で初めて登場し、シャーロック・ホームズの「犯罪者版」ともいわれます。 日本では慣例として「ルパン」と表記されますが、フランス語の発音は「リュパン」に近く、20世紀初めの翻訳には「リュパン」と書かれたものもあります。

怪盗紳士の人物像

ルパンは紳士にして冒険家、そして変装の名人で、いくつもの変名を持っています。貴族の城館や資本家の邸宅を襲って宝石や美術品を盗む大胆不敵な大泥棒であり、脱獄の名人でもあります。 その一方で、善良な人を助ける義賊の性格もあわせ持ち、虐げられた女性や子どもにとっては頼もしい守り手になります。

シリーズは1905年から四半世紀以上にわたって書かれました。前期は神出鬼没の怪盗紳士の話が中心ですが、中盤は「ドン・ルイス・ペレンナ」としての愛国的な冒険、後期は「探偵ジム・バーネット」などの探偵ものへと移り、時期によって味わいがかなり違います。

実は親日家?

意外なことに、ルパンは親日家として描かれています。ルブランが執筆した当時、欧米ではまだあまり知られていなかった柔道などの武術を身につけていて、短編集『怪盗紳士ルパン』の中では、日本にはぜひ行ってみたいと話し、日本を「古い古い神秘の国」と評しています。

作中の年譜では、ルパンは1874年生まれで、幼いころの名はラウールでした。父は体育教師のテオフラスト・ルパン、母はアンリエット・ダンドレジーです。6歳のときに最初の事件「王妃の首飾り」を起こしたことになっています。

変装とシルクハットの真実

変装はルパンの代名詞の一つですが、原作の変装はアニメのように顔全体にマスクをかぶるものではありません。多くは化粧や服装を変える程度で、ルパンが本当に重視するのは、しぐさや歩き方、表情や話し方を変える、俳優としての技術です。

また、「シルクハットに夜会服、片眼鏡」というおなじみの姿は、実は原作の本文には描かれていません。最初の単行本の表紙などのイラストがこのスタイルだったことから広まったらしく、ホームズの「鹿撃ち帽」と同じような事情だといわれます。

ホームズが「ショルメ」になった理由

ルブランは1906年6月15日に発表した短編「遅かりしシャーロック・ホームズ」で、年老いたホームズと若いルパンを初めて対面させました。 しかしコナン・ドイルから異議が出たため、名前は「エルロック・ショルメ(Herlock Sholmès)」に変えられました。著作権の問題とも、ルブランの息子によればドイル自身の求めだったともいわれます。

ショルメはその後も『ルパン対ホームズ』の二つの物語や、『奇巌城』の秘密をめぐる戦いに登場します。 この「もじり名」は今も生きていて、日本のゲーム『大逆転裁判』の海外版では、ルブランへの敬意を込めて「Herlock Sholmes」という名が使われました。

どこから読むか

最初の一冊には、ルパンの逮捕や脱獄を描いた短編集『怪盗紳士ルパン』がおすすめです。 そこから『ルパン対ホームズ』、長編の『奇巌城』『813』へ進むと、ルパンの魅力がよくわかります。 ルブランはルパンを17の長編と39の中短編に登場させ、それらは合わせて24冊の本にまとめられました。 ルパンの名を受け継いだ日本の漫画やアニメを知っている人も、一度は原作の怪盗紳士に会ってみてはいかがでしょうか。

ルパンの先祖と不思議な冒険

ルパンには文学上の先祖がいます。1857年から1870年にかけて冒険が発表されたポンソン・デュ・テライユの怪盗ロカンボールで、法の外側にいながら善を行う点が共通しています。イギリスのホーナングが生んだ紳士泥棒ラッフルズにもよく似ています。 そしてルパンとラッフルズは、のちの「ローン・ウルフ」や「セイント」といった人物に影響を与えました。

作中の年譜には、空想的な出来事も含まれています。1912年ごろにはドン・ルイス・ペレンナとしてモロッコに現れ、モーリタニア帝国のスルタンにまでなったとされ、1917年にはブルターニュの島で「人を生かしも殺しもする神の石」を発見します(『三十棺桶島』)。

ルパンで学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
神出鬼没 自由自在に現れたり消えたりする 彼は神出鬼没で、なかなか会えない。
大胆不敵 度胸があって何も恐れない 大胆不敵な計画に驚いた。
一枚上手 相手より能力が少し上である 交渉では相手のほうが一枚上手だった。
手玉に取る 人を思いのままに操る ルパンは警察を手玉に取った。
煙に巻く 相手を混乱させてごまかす 質問をはぐらかして煙に巻いた。

練習: 好きな賢い登場人物について、「一枚上手」と「手玉に取る」を使って三文書いてみましょう。

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