『オペラ座の怪人』原作小説のあらすじと結末は?怪人エリックの正体

ガストン・ルルーの原作小説では、怪人エリックはクリスティーヌのひとつの優しさに心を動かされ、彼女を手放して孤独に死にます。あらすじと結末、実在のオペラ座を解説。

『オペラ座の怪人』の原作小説は、パリのオペラ座の地下に住む怪人エリックが若い歌手クリスティーヌ・ダーエに恋をし、彼女をさらった末に、彼女のひとつの優しさに心を動かされて手放し、ひとり死んでいく物語です。 作者はフランスの作家ガストン・ルルーで、1909年9月23日から1910年1月8日まで日刊紙『ル・ゴロワ』に連載され、1910年に単行本として出版されました。 ミュージカルで知られる物語ですが、原作はもっと謎解きの色が濃く、結末も静かで悲しいものです。

題名と作品の特徴

最初の映画版の邦題は「オペラの怪人」、1930年に出た日本語訳の題は「オペラ座の怪」でした。しかし原題の「l'Opéra」は単なるオペラではなく固有名詞の「オペラ座」を指すという解釈から、以後は「オペラ座の怪人」が定着しました。

新聞記者でもあったルルーは、この小説を取材記事のような疑似ノンフィクションの調子で書いています。実際のオペラ座(ガルニエ宮)の構造や地下の広大な奈落、建築の経過を詳しく調べ、建設当時の幽霊話や事件も取り入れて、虚構と現実が入り交じった怪奇ロマンに仕上げました。

実在するオペラ座と地下の「湖」

舞台のガルニエ宮は実在の建物です。完成当時、屋根の火事で大シャンデリアの釣り合いおもりを支えるワイヤーが溶け、落下事故で死傷者が出たという出来事があり、ルルーはこれを幽霊のうわさと結びつけて物語にしました。 小説に出てくる地下の「湖」も、実際には建物の下にある巨大な貯水槽として存在し、今も消防士が暗闇で泳ぐ訓練に使われています。

あらすじ

舞台は1880年のパリ。年老いた支配人たちの退職を祝うガラで、若手歌手クリスティーヌが喝采を浴びます。幼なじみのラウル子爵は彼女の歌を聴き、彼女への愛を思い出しました。 そのころオペラ座には謎の怪人が住み着いているといううわさがあり、怪人は月給2万フランと5番ボックス席の確保を支配人に要求していました。

数日後の『ファウスト』の上演では、怪人の望みに反してカルロッタが主役を演じます。すると上演中にカルロッタは声を失い、豪華なシャンデリアが客席に落下しました。 怪人はクリスティーヌをさらって地下の住まいへ連れて行き、エリックと名乗ります。クリスティーヌに仮面をはぎ取られ、素顔を見られたエリックは、彼女を永遠に自分のものにしようと考えますが、二週間後、指輪をはめて裏切らないことを条件に彼女を解放します。

オペラ座の屋根の上で、クリスティーヌはラウルにすべてを打ち明け、二人で逃げる約束をします。しかしその会話をエリックが盗み聞きしていました。

地下の拷問部屋と結末

翌日の夜、『ファウスト』の上演中に、エリックはクリスティーヌをさらって地下深くへ消え、無理やり結婚しようとします。断ればオペラ座を爆破すると脅したのです。 ラウルは、元ダロガ(ペルシャ語で国家警察の長官の意味)の謎のペルシャ人とともに地下へ潜入しますが、たどり着いたのは鏡のトリックを使った拷問部屋でした。 二人と地上の人々を守るため、クリスティーヌはエリックとの結婚を承知します。

隠れ家に戻ったエリックは、クリスティーヌが逃げずに待っていて、額にキスをさせてくれたことに涙を流し、彼女の足もとに崩れ落ちます。クリスティーヌも「かわいそうな、不幸なエリック」と言って涙を流しました。エリックは、母親でさえキスをさせてくれたことはなかったと後に打ち明けます。

エリックは二人を解放し、自分が死んだらクリスティーヌが訪ねてきて遺体を埋葬し、渡した金の指輪を遺体の指にはめてくれるよう約束させます。 やがて新聞に「エリック死す」という記事が載り、クリスティーヌとラウルは二人で去っていきました。

怪人エリックの正体

物語の後半は、エリックの秘密を知るペルシャ人ダロガの手記という形で描かれ、ルルーがこの手記を手に入れて小説を書いたという仕掛けになっています。終盤はダロガが事実上の主役級になっていて、ここが後のミュージカル版との大きな違いです。

エピローグでは、エリックの過去が明かされます。彼は生まれつき顔に障害を持つ建築業者の息子で、故郷のノルマンディーを逃げ出して見世物や旅芸人の一座で働き、ヨーロッパやアジアで曲芸を独学し、ペルシャやトルコでは仕掛けだらけの宮殿を建てました。 フランスに戻ってからはオペラ座の基礎工事を請け負い、その際にひそかに隠し通路つきの住まいを造ったのです。 「幽霊」の正体は、誰よりもこの建物を知る建築家でした。

この小説をもとに、1925年のロン・チェイニー主演の映画や、1986年のアンドルー・ロイド・ウェバーによるミュージカルなど、数多くの作品が生まれています。

物語のもとになった話と日本語訳

この小説は、19世紀のパリ国立オペラで起きた史実を取り入れ、さらにカール・マリア・フォン・ウェーバーの『魔弾の射手』の1841年の公演をめぐる話をもとにしていると考えられています。 新聞連載版には「魔法の封筒」という一章がまるごとあり、その内容の多くは単行本の別の章に移されましたが、章そのものの英訳は2014年まで出ませんでした。

日本語訳も数多く、三輪秀彦訳(創元推理文庫、1987年)、長島良三訳(角川文庫、2000年)、平岡敦訳(光文社古典新訳文庫、2013年)、村松潔訳(新潮文庫、2022年)などで読むことができます。 ミュージカルで物語を知った人も、原作ならではの謎解きと、ペルシャ人ダロガの語りを味わってみてください。

『オペラ座の怪人』で学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
仮面をはぐ 隠していた本性を明らかにする 記者がその政治家の仮面をはいだ。
盗み聞きする 人の話をこっそり聞く 隣の席の会話を盗み聞きしてしまった。
板挟み 二つの間で身動きがとれないこと 彼女は恋人と師の板挟みになった。
心を打たれる 深く感動する 彼の優しさに心を打たれた。
約束を果たす 約束したことを実行する 彼女は最後に約束を果たした。

練習: 「仮面をはぐ」と「心を打たれる」を使って、ある人の意外な一面を知った経験を三文で書いてみましょう。

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