ネフェルティティの胸像は何がすごい?謎の王妃と消えた最期

ベルリンの胸像で有名な古代エジプト王妃ネフェルティティ。アテン信仰、記録からの消失、女性ファラオ説、胸像の秘密をわかりやすく紹介します。

ネフェルティティの胸像がすごいのは、三千年以上前の王妃の顔が、色も表情もほぼそのまま残っているからです。そしてもう一つ、記録から消された王妃の姿を、この一体の像が世界に知らしめたという皮肉な事実があります。 ネフェルティティは紀元前14世紀中ごろ、第18王朝のファラオ・アクエンアテンの正妃で、ツタンカーメンから見ると義母にあたる人物です。 胸像は高さ48cmで、石灰岩の芯に漆喰を盛って作られています。

「美しい人が来た」という名前

ネフェルティティという名前は、ふつう「美しい人が来た」という意味だと説明されます。 両親ははっきりしていません。大神官アイとテイの娘とする説と、北方の国ミタンニの王女タドゥキパとする説があります。 ただ英語版ウィキペディアは、アイを父とする説には史料の直接の裏付けがなく、ミタンニ王女説も根拠が弱いと指摘しています。 出自がわからないこと自体が、彼女の神秘的なイメージを強めてきたと言えるでしょう。

彼女とアクエンアテンの間には6人の娘が生まれました。 そのうちアンケセンパアテンは、のちにアンケセナーメンと名を変え、ツタンカーメンの妻になります。

王よりも多く描かれた王妃

夫がまだアメンホテプ4世と名乗っていた治世の初めごろ、ネフェルティティはテーベの神殿の場面に頻繁に登場します。最初の5年間の建材の装飾を見ると、王本人の倍近い回数で描かれていたとされます。 さらに、敵を打ち倒す姿や戦車を走らせる姿など、ふつうはファラオだけに許された場面にも描かれました。 王妃でありながら、ほとんど王と並ぶ存在として扱われていたことがわかります。

アテン信仰と新しい都アマルナ

アクエンアテンは在位4年にアテン信仰を宣言し、新しい都アケトアテン、現在のアマルナの建設を始めました。在位7年には遷都が行われ、有名な胸像もこの前後に作られたと考えられています。 アテンとは太陽の円盤そのものを神とする信仰で、これが厳密な一神教だったのか、ひとつの神を特別にあがめる信仰だったのかは研究者の間でも議論があります。

在位5年に王はアクエンアテンと名を改め、王妃も「ネフェルネフェルウアテン・ネフェルティティ」と呼ばれるようになりました。 この「ネフェルネフェルウアテン」という名前が、のちの大きな謎の鍵になります。

記録から消えた理由

在位12年の娘メケトアテンへの言及を最後に、ネフェルティティの記録は在位14年ごろに途絶えると長く考えられてきました。理由については、王が言及を禁じたという説や、政治的に失脚したという説などがあります。

ところが2012年、デイル・アブ・ヒンニスの石切り場で在位16年の落書きが見つかり、そこには王とネフェルティティの名前が並んでいました。つまり彼女は、夫が在位17年ごろに亡くなる直前まで、生きて正妃の地位にあったのです。 「消えた王妃」という見方は、この発見で大きく揺らぎました。

女性ファラオになったのか

アクエンアテンの死後、ネフェルネフェルウアテンという名の謎の王が現れます。その王名の一つには「夫に有益なる者」という女性形の言葉が含まれています。 研究者エイダン・ドドソンは、ネフェルティティがこの名で女性ファラオになったと主張しています。 日本の河合望氏や、アメリカのジェームズ・P・アレンらもこの説を支持しています。 ツタンカーメンの即位後も存命で影響力を持っていたとする見方もあります。

ヒッタイトに届いた不思議な手紙

ネフェルティティをめぐっては、外交上の謎もあります。トルコのハットゥシャで見つかった記録によると、夫を亡くしたエジプトの王妃が、ヒッタイトの王に「王子を夫として送ってほしい」と頼んだというのです。王子ザナンザはエジプトへ向かう途中で亡くなりました。 ヒッタイト側の記録では、この王妃はダハムンズと呼ばれています。その正体はネフェルティティ、娘のメリトアテン、アンケセナーメンのいずれかだと考えられていますが、決め手はありません。

外国の王子を夫に迎えようとするほど、王家は後継ぎの問題で追い詰められていたのかもしれません。もし手紙の主がネフェルティティなら、彼女は最後まで国の行く末を自分の手で決めようとしていたことになります。どちらにしても、史料が少ないために想像の余地が大きく残る場面です。

ミイラと墓はどこに

ネフェルティティの墓はまだ見つかっていません。 2003年に「若い婦人」と呼ばれるミイラが彼女だという説が出ましたが、のちのCTとDNAの調査で、この女性はツタンカーメンの母でアメンホテプ3世とティイの娘だと結論づけられました。王家の谷のKV21のミイラを推す説もありますが、DNAの結果ははっきりしていません。 ツタンカーメンの墓の奥に隠し部屋があるという説も話題になりましたが、のちのレーダー調査ではそうした部屋は見つかりませんでした。

胸像に隠されたもう一つの顔

胸像には、さらに驚く話があります。2010年のCTスキャンで、内部に別の女性像の顔が確認されたのです。今の美しい姿は、もとの像を仕立て直したものだという見解が示されています。 胸像は彫刻家トトメスの工房跡から1912年に見つかり、現在はベルリンの新博物館に展示されています。 その顔はエジプトの紙幣にも使われ、彼女は今や古代エジプトを代表する顔の一つになりました。

ネフェルティティで覚える日本語表現

表現 意味 例文
謎に包まれる よくわからないことが多い 彼女の最期は謎に包まれている。
肩を並べる 同じくらいの地位や力を持つ 王妃は王と肩を並べる存在だった。
姿を消す いなくなる 記録から突然姿を消した。
定説を覆す 広く信じられた説をひっくり返す 新しい落書きが定説を覆した。
一世を風靡する 世の中で大評判になる 胸像の発見は一世を風靡した。

練習問題: 歴史上の謎を一つ選び、「謎に包まれる」「定説を覆す」を使って三文で説明してみましょう。

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