ロビン・フッドは実在した?伝説と史実をわけて読む
ロビン・フッドが実在したという確かな証拠はありません。名前は無法者のあだ名で、伝説は何百年もかけて育ちました。史料と後世の脚色を整理します。
ロビン・フッドが実在したという信頼できる証拠はありません。15世紀のスコットランドの年代記には実在の人物のように書かれたものもありますが、それを裏づける確かな史料は見つかっていません。 1225年や1261年のイングランドの裁判記録には似た名前の男が何人も出てきて、その多くが無法者や犯罪者でした。この名前は、無法者を指すあだ名のように使われていたと考えられています。 確かにたどれるのは、一人の人物ではなく「伝説そのもの」の歴史なのです。
最初の登場は詩の中のひとこと
文学で最初にその名が出てくるのは、1377年ごろの詩『農夫ピアズの夢』です。ただし、ロビンは話のついでにふれられるだけでした。 怠け者の司祭が、祈りの言葉はよく知らないのに「ロビン・フッドの歌」なら知っている、と打ち明ける場面です。 つまり、そのころにはすでに人気の娯楽になっていたことがわかります。けれども、歌で有名なことは、その人物が本当にいた証拠にはなりません。
「本物のロビン」の候補たち
これまでに何人かの実在の人物が候補にあがりました。1226年の記録に、財産を没収された逃亡者として出てくるヨークのロバート・ホッドは、早い時期のロビン・フッドの中で無法者だったと確かにわかる唯一の人物です。ただ、盗賊団の頭だった証拠はありません。 1260年代にシモン・ド・モンフォールの反乱を支持した無法者ロジャー・ゴドバードをモデルとする説もありますが、彼がロビン・フッドと呼ばれた証拠はありません。 日本語版ウィキペディアは、ノルマン征服に抵抗したヘレワードのような別の英雄の姿が伝説に取りこまれた可能性にもふれています。
最古の物語のロビンは「ヨーマン」
いま残る最古のバラッドの一つが『ロビン・フッドと修道士』で、1450年以降に書き留められました。長い物語詩『ロビン・フッドの武勲』は1500年ごろの印刷本でしか残っていませんが、15世紀半ばにまとめられたと考えられ、456の連が8つの部分に分かれています。
このころのロビンは貴族ではなく、ヨーマン、つまり騎士より下の自由な平民です。 『武勲』では、強欲な修道院長に400ポンドの借金がある騎士を助け、ノッティンガムで弓の大会に勝ち、誓いを破った代官を倒します。登場する王は「エドワード王」で、獅子心王リチャードではありません。 物語の中では、リトル・ジョンが代官に仕えるふりをして森へ誘い出し、代官を一晩野宿させてこらしめる場面もあります。変装した王がロビンと弓を競い、のちにロビンが宮廷に仕えるという展開も描かれています。
シャーウッドかヨークシャーか
いまロビンといえばノッティンガムのシャーウッドの森ですが、日本語版ウィキペディアによると、シャーウッドやバーンズデイルという舞台は後から加わった要素です。 『武勲』はヨークシャーのバーンズデイルの森に立つロビンの姿から始まり、ドンカスターやカークリーズなど北部の地名が多く出てきます。
なぜ「森の無法者」だったのか
ロビンが森に住む理由も、中世の暮らしと関係があります。日本語版ウィキペディアは、ロビンと森の結びつきを王の森の法律と結びつけて説明しています。王の森で狩りをしたり木を切ったりすることは重い罪で、ウィリアム2世のころに取り締まりが厳しくなり、のちにマグナ・カルタがその行きすぎに制限をかけました。こうした事情が、森で鹿を射る無法者という姿に映っているのかもしれません。 また、最初期の話はもっと乱暴な無法者の物語で、それが時とともに、腐敗した権力に立ち向かい、信心深く、王には忠実な反逆者の物語へと作り直されていったといわれます。 伝説は、聞き手の好みに合わせて少しずつ形を変える生き物のようなものなのです。
後の時代に足されたもの
「定番」のロビン・フッドの多くは、中世のものではありません。恋人マリアンと修道士タックは、村人がロビン一味に扮した五月祭の遊びを通じて後から加わったと考えられています。 ロビンとマリアンの恋には、アダン・ド・ラ・アルの劇『ロバンとマリオンの劇』のような牧歌の伝統が影響しました。 リチャード1世とジョン王子の時代という設定は、1521年に歴史家ジョン・メージャーが定めたものです。 「金持ちから奪って貧しい人に与える」という決まり文句も、1592年のジョン・ストウの年代記が最初です。 さらにウォルター・スコットの『アイヴァンホー』(1819年)が、ノルマン人の領主に抵抗するサクソン人の英雄という姿を広めました。
伝説が語る最期
『武勲』はロビンに暗い結末を与えています。体を悪くしたロビンは、血を抜く治療が得意な親類の女子修道院長をカークリーズ修道院に訪ねますが、彼女とその恋人に血を流しつづけられて亡くなります。 これは記録ではなく伝説です。それでも、昔の聞き手も弱さをもつ人間らしい英雄を好んだことが伝わってきます。
結局、実在したのか
いちばん公平な答えはこうです。ロビン・フッドと呼ばれた本物の無法者は何人もいたかもしれません。でも、バラッドの英雄は物語の中の人物で、歌や祭りの中で育ち、時代ごとに必要な姿へと変わってきました。一人の人間ではなかったからこそ、誰もが借りられる「公正さ」の象徴として生き残ったのです。
ロビン・フッドで覚える日本語表現
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 義賊 | 金持ちから奪い貧しい人を助ける盗賊 | ロビン・フッドは義賊の代表だ。 |
| 的を射る | 要点をうまくとらえる | 彼の意見は的を射ている。 |
| 身を隠す | 人に見つからないように隠れる | 一味は森に身を隠した。 |
| 尾ひれがつく | 話が大げさになる | うわさに尾ひれがついた。 |
| 語り継ぐ | 次の世代へ話を伝える | 伝説は何百年も語り継がれた。 |
練習問題: 「尾ひれがつく」「語り継ぐ」を使って、あなたの知っている伝説について三文で書いてみましょう。