『宇宙戦争』の火星人はなぜ死んだ?ウェルズの原作あらすじとラジオ「パニック」の真相

H・G・ウェルズの『宇宙戦争』で火星人を倒したのは軍隊ではなく病原菌でした。原作のあらすじと結末、作品に込められた意味、1938年のラジオ「パニック」の真相を解説します。

『宇宙戦争』の火星人は、地球の病原菌によって死にました。人間の武器や作戦ではなく、太古から地球にいた病原菌に対する免疫をまったく持っていなかった火星人たちは、地球で呼吸し、飲み食いを始めたときから死ぬ運命だったのです。 『宇宙戦争』は、イギリスの作家H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説で、20世紀の初めに火星人が地球を武力で侵略するようすを、英国人男性の回顧録の形で描いたSFの古典的名作です。

題名の意味

原題の "The War of the Worlds" は、直訳すると「世界同士の戦争」です。「地球人の世界」と「火星人の世界」という二つの世界が争う、という意味が込められています。 火星人が地球に来たのは、地球より古く小さい自分たちの星が「消耗の最終段階」に達したからだとされています。

火星人の襲来

ある金曜日の未明、緑色の流れ星が観測され、ロンドン南西のウォーキング近くに直径30ヤードほどの巨大な円筒が落ちます。夕方、主人公の「私」を含む見物人が集まる中、ふたが開いて醜い火星人が現れました。 天文学者たちが知性を示そうと代表団を作って近づいた途端、目に見えない熱線が人々を焼き払いました。熱線の威力はすさまじく、人や動物、周りの木々や家まで一瞬で炎に包まれました。

やがて家より背の高い3本脚の戦闘機械(トライポッド)が現れ、破壊の限りを尽くします。英国軍は全滅し、火星人は熱線に加えて液体のような黒い毒ガスを使ってロンドンへ向かいました。 英国政府は、もはやロンドンは守れない、黒い毒ガスからは逃げるしかないと避難を呼びかけ、市民はパニックになって逃げまどいます。「私」の弟は港までたどり着き、駆逐艦サンダーチャイルドが戦闘機械に体当たりで挑むあいだに、蒸気船で英国を脱出しました。

廃屋での15日間

一方の「私」は、出会った副牧師と一緒に空き家に逃げ込みますが、すぐ近くに火星人の円筒が落ちて廃屋に閉じ込められてしまいます。日がたつうちに二人は対立し、極限状態に陥った副牧師が大声を出したため、「私」は彼を殴り倒しました。 隠れ場所から見た火星人は、人間の血を食料にし、テレパシーのようなもので意思を伝え合っているようでした。 15日目の朝、あたりが静まり返ったので外に出ると、火星人は姿を消していました。

結末:静かなロンドンで

静まり返ったロンドンに入った「私」は、戦闘機械を見つけ、死を覚悟して近づきます。そこで見たのは火星人たちの死体でした。 やがて人々が戻って復興が始まり、「私」は約4週間ぶりに自宅へ帰ります。窓の外で話し声がして見ると、それは妻とそのいとこでした。

ウェルズは何を描きたかったのか

この作品は、進化論、帝国主義、ヴィクトリア朝の不安や偏見についての論評としても読まれてきました。ウェルズ自身、ヨーロッパの植民地化がタスマニアの先住民にもたらした破局的な影響から着想を得たと語っています。 世界最大の植民地帝国だったイギリスの人々に、「征服される側」になる恐怖を想像させたのです。また、この作品をきっかけに、大きな頭とタコのような体を持つ火星人のイメージが世の中に広まったといわれます。

なぜ火星だったのか

ウェルズは1880年代後半に理科の教師になる訓練を受け、ダーウィンの進化論を強く支持したトマス・ヘンリー・ハクスリーに学びました。 侵略者の星に火星を選んだのは、地球にいちばん似た惑星だったことに加え、当時の科学者が火星は地球より古いと誤って考えていたためです。古い星なら、火星人は人類より長く進化して、ずっと賢くなっているはずだと考えたのです。 1877年にはイタリアの天文学者スキアパレッリが火星に筋のような模様を見つけ、1895年にはアメリカのローウェルが、それは知的生命が作った運河かもしれないと唱えていました。

舞台のウォーキングは、ウェルズが1895年に妻と移り住んだ町です。彼は午前中に自転車で近所を回り、自伝に「火星人に破壊させるのにふさわしい場所と人を書き留めながら走り回った」と書いています。 また、前年の1897年に発表された短編『水晶の卵』には、火星の風景と、よく似た姿の火星人や赤い植物が描かれており、『宇宙戦争』の前日譚のようにも読めます。

ラジオ「パニック」は本当にあったのか

1938年10月30日、アメリカのCBSで、俳優オーソン・ウェルズの番組がこの作品をラジオドラマにしました。舞台はアメリカに置き換えられ、実際のニュースのような形で放送されたため、多くの市民が本当の侵略だと思い込み、全米でパニックが起きたと長く語られてきました。 しかし現在の研究では、パニックはほとんど確認できず、番組の聴取率はわずか2%で、訴訟が相次いだ、州兵が放送局を警備したといった当時の記事も誤報だったことが分かっています。 それでも、この「パニック」報道をきっかけにオーソン・ウェルズの名声が急に高まったのは確かです。 その後も1953年にはジョージ・パル製作の映画が作られてアカデミー特殊効果賞を受け、2005年にはスティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で再び映画化されました。

『宇宙戦争』で学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
破壊の限りを尽くす 徹底的に壊す 戦闘機械が破壊の限りを尽くした。
逃げまどう どこへ逃げればよいか分からず逃げる 市民は逃げまどった。
死を覚悟する 死ぬことを受け入れる 彼は死を覚悟して近づいた。
思い込む 本当だと強く信じてしまう 放送を本物だと思い込んだ。
弱り目にたたり目 悪いことが重なる 人類にとって弱り目にたたり目だった。

練習: 「思い込む」と「死を覚悟する」を使って、結末に驚いた映画や本について三つの文を書いてみましょう。

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