『バスカヴィル家の犬』のあらすじと犯人は?ホームズ長編と魔犬伝説のモデル

シャーロック・ホームズ長編の代表作『バスカヴィル家の犬』。呪いの伝説、ダートムアでの事件、犯人と結末、魔犬のモデルとなった伝説までやさしく解説します。

『バスカヴィル家の犬』は、アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの長編小説のひとつです。邦訳によっては『バスカービルの魔犬』、子ども向けには『のろいの魔犬』という題でも知られています。 舞台はイングランド南西部デヴォンのダートムア。魔犬の呪いが伝わる名家で当主が怪死し、ホームズとワトスンが「呪い」の正体を追うと、その裏には周到に計画された殺人がありました。 以下、あらすじを順に紹介し、犯人と結末の前には注意書きを入れます。

魔犬の伝説

バスカヴィル家には、こんな伝説が伝わっています。かつて悪行を重ねた当主ヒューゴー・バスカヴィル卿が、最後に女性をさらうという蛮行に及んだとき、どこからともなく現れた大きな犬に喉笛をかみちぎられて殺された、というものです。

そして現在。当主チャールズ・バスカヴィル卿の遺体が、屋敷の敷地内の小道で見つかりました。暴行の跡はなく、表向きは心臓発作による病死とされましたが、その顔は苦しそうにゆがみ、遺体のそばには巨大な犬の足跡が残されていました。

新しい当主と謎の手紙

ホームズに調査を頼んだのは、チャールズ卿の主治医で友人でもあるモーティマー医師です。子どものいないチャールズ卿の跡継ぎは、甥にあたる若いヘンリー・バスカヴィル卿ただ一人でした。ところがロンドンに着いたヘンリー卿のもとに、屋敷へ行くなと警告する謎の手紙が届きます。 さらにブーツの片方が盗まれ、ひげの男が馬車で彼を尾行していました。ホームズはロンドンで別の事件があると言って、ワトスンだけをヘンリー卿に付き添わせ、屋敷へ送り出します。

ワトスンの報告

物語の中盤は、ワトスンがホームズに送る手紙や日記で進みます。屋敷には何か事情がありそうな執事バリモアとその妻がいて、近くの監獄からは殺人犯セルデンが脱走して潜んでいます。近所には昆虫学者のステープルトンと、その美しい妹ベリル嬢が住んでいました。 ベリル嬢はなぜか、ワトスンやヘンリー卿にこの土地から立ち去るよう頼みます。夜の湿地帯からは、恐ろしいうなり声も聞こえてきます。

やがて、夜中にろうそくで合図を送っていたバリモア夫妻の秘密がわかります。脱獄囚セルデンはバリモア夫人の実の弟だったのです。 さらにワトスンは、近くの古代遺跡に正体不明の男が潜んでいると聞き、その石室に乗り込みます。物陰でピストルを構えていると、聞き慣れた声がしました。旅人の格好をしたその男は、ロンドンにいるはずのシャーロック・ホームズでした。ホームズはひそかに独自の調査を進めていたのです。

ここから結末:犯人は誰?

結末を知りたくない人は、ここで読むのをやめてください。ホームズは、ステープルトンが結婚していて、その相手は妹と称しているベリル嬢だと明かします。 ある夜、男の叫び声と犬のうなり声を聞いて駆けつけると、ヘンリー卿の服を着た死体がありました。しかしそれはセルデンでした。バリモアがヘンリー卿から譲られた服をセルデンに渡していたため、魔犬は服のにおいを追ってセルデンを襲ったのです。

屋敷に戻ったホームズは、壁に掛かったヒューゴー・バスカヴィルの肖像画がステープルトンにそっくりなことに気づきます。バスカヴィルの血を引くステープルトンは、ヘンリー卿を殺して家を乗っ取ろうとしていたのです。 ホームズはヘンリー卿をおとりにして、夕食のあと一人で荒野を歩いて帰らせました。追ってきた魔犬は口から火を吐くように見えましたが、実は口にリンが塗られていて光っていただけでした。ホームズたちは犬を撃ち倒し、ヘンリー卿は無事でした。ステープルトンは底なし沼の方へ逃げ、姿を消します。

事件は何年のこと?

モーティマー医師が置き忘れたステッキには「1884」と刻まれていて、それを5年前のことだと言っているので、事件は1889年と考えるのが自然です。ところが1889年のワトスンはすでに結婚していて、ホームズとは同居していないはずなので、矛盾が生じます。研究者によって事件の年はまちまちで、1886年から1900年までさまざまな説があります。 こうした細かな「謎」を考えるのも、ホームズファンの楽しみのひとつです。

どうやって生まれた作品?

1901年、ドイルはボーア戦争で知り合ったジャーナリスト、バートラム・フレッチャー・ロビンソンから、彼の故郷ダートムアに伝わる黒い魔犬の伝説を聞き、それに着想を得てこの作品を書きました。そのため本の冒頭にはロビンソンへの献辞があります。 当初はホームズとは関係のない作品の予定でしたが、主役を考えるうちにホームズを使う案が浮かびました。 伝説の元になったのは、悪魔に魂を売ったと噂されたデヴォンの地主リチャード・キャベルの話で、1677年に彼が埋葬された夜、幻の猟犬の群れが墓に向かって吠えたといわれます。

ホームズは生き返ったの?

ドイルは1893年の「最後の事件」でホームズを一度死なせていて、この作品は8年ぶりの新作でした。ただし物語の時期は「最後の事件」より前なので、本当の意味での生還ではありません。書店に押し寄せた読者はがっかりし、ホームズの本格的な復活まであと数年待つことになりました。 刊行の翌年にドイルがナイトの爵位を受けたとき、多くの人はホームズを復活させたご褒美だと信じましたが、実際はボーア戦争での活動などに対するものでした。

映像化も多く、1939年の映画ではベイジル・ラスボーンが初めてホームズを演じました。 霧の荒野、沼、火を吐く魔犬という舞台が、怪奇小説のような雰囲気を作っているのも人気の理由でしょう。

『バスカヴィル家の犬』で学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
尻尾をつかむ 悪事の証拠をにぎる ホームズはついに犯人の尻尾をつかんだ。
一枚うわて 相手より能力が上 犯人よりホームズのほうが一枚うわてだった。
化けの皮がはがれる 隠していた正体がばれる 肖像画で犯人の化けの皮がはがれた。
身の毛がよだつ 恐ろしくてぞっとする 荒野のうなり声に身の毛がよだった。
足取りをたどる 人の行動のあとを追う ワトスンは謎の男の足取りをたどった。

練習: 「尻尾をつかむ」と「化けの皮がはがれる」を使って、三文の短いミステリーを書いてみましょう。

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