シェイクスピアはなぜ偉大なのか?手袋職人の息子が「全時代の劇作家」になるまで
ストラトフォードの手袋職人の息子が残した約39編の戯曲と154編のソネットは、80以上の言語に翻訳されています。生涯と作品、英語への影響をわかりやすく解説します。
シェイクスピアが偉大だと言われる理由は、これほど長く、これほど多くの国で上演され、読まれ、翻訳され、引用されてきた劇作家がほかにいないからです。現存する作品は戯曲約39編、ソネット154編、長編物語詩3編などで、戯曲は80以上の言語に翻訳されています。 「世界で最も上演されている劇作家」と呼ばれることも少なくありません。 ただ、1616年に亡くなった人物がいまも私たちの言葉に影響を与えている理由は、名声だけでは説明できません。その生涯と劇場、そして英語に残した足跡を順に見ていきましょう。
手袋職人の息子として
ウィリアム・シェイクスピアは1564年4月26日、イングランド中部のストラトフォード・アポン・エイヴォンで洗礼を受けました。誕生日は伝統的に4月23日とされますが、これは彼の命日と同じ日付で、伝記作家に好まれてきた日付でもあります。 父ジョンは手袋職人で町の参事会員、母メアリー・アーデンは裕福な地主の家の出身でした。8人きょうだいの3番目で、生き残った男子の中では長男でした。
学校の記録は残っていませんが、多くの伝記作家は、自宅近くの無料のグラマースクールで学んだと考えています。18歳のとき、8歳年上の26歳のアン・ハサウェイと結婚し、長女スザンナ、続いて双子のハムネットとジュディスが生まれました。息子ハムネットは11歳で亡くなっています。
「失われた年月」とロンドンでの成功
1585年ごろから1592年ごろまで、シェイクスピアの記録はほとんど残っていません。この期間は「失われた年月」と呼ばれます。鹿を密猟して故郷を逃げ出したなどの逸話が伝わっていますが、裏付けはほとんどありません。
確かなのは、1592年までに彼の戯曲がロンドンの舞台で上演されていたことです。同じ年、劇作家ロバート・グリーンは彼を「われわれの羽で着飾った成り上がりのカラス」と皮肉りました。大学を出た作家たちと張り合う新参者への反発だったと、多くの研究者は読んでいます。
当時のロンドンの劇場は、ペストが流行するたびに閉鎖されました。シェイクスピアはその間に物語詩『ヴィーナスとアドーニス』(1593年)と『ルークリース凌辱』(1594年)を出版し、どちらもサウサンプトン伯ヘンリー・リズリーに献呈しています。この2作はよく売れ、生前に何度も版を重ねました。 同時代の人々にとって、彼は劇作家であると同時に人気詩人でもあったのです。1597年には故郷でストラトフォード第2の大きさの邸宅ニュー・プレイスを購入しており、仕事が経済的にも成功していたことがうかがえます。
劇団の共同経営者、そしてグローブ座
シェイクスピアは雇われ作家ではなく、劇団「宮内大臣一座」の共同出資者でした。この劇団は1603年にジェームズ1世が即位すると「国王一座」になります。1599年には劇団員たちがテムズ川南岸にグローブ座を建て、1599年以降の代表作の多くはこの劇場のために書かれました。 そのグローブ座は1613年6月29日、『ヘンリー八世』の上演中に大砲の火が茅葺き屋根に燃え移り、焼け落ちてしまいます。
喜劇から四大悲劇、そしてロマンス劇へ
1590年代前半には『リチャード三世』などの歴史劇、半ばには『夏の夜の夢』『ヴェニスの商人』『十二夜』などの喜劇を書きました。その後『ハムレット』『オセロー』『リア王』『マクベス』といった悲劇が生まれます。1610年以降は作品数が減り、『冬物語』『テンペスト』などのロマンス劇を残しました。1613年より後に書かれたとされる作品はありません。
遺言と「2番目に良いベッド」
1616年4月23日、シェイクスピアは52歳で亡くなりました。遺言で財産の大部分を長女スザンナに残し、妻アンには「2番目に良いベッド」を遺しました。この一文の意味は今も議論されています。
ファースト・フォリオがなければ
彼は自分の戯曲全集を出版しませんでした。死後の1623年、俳優仲間のジョン・ヘミングスとヘンリー・コンデルが36編を収めた「ファースト・フォリオ」を刊行し、そのうち18編はこれが初めての印刷でした。 同書に寄せたベン・ジョンソンの「一時代のものではなく、すべての時代のもの」という賛辞は有名です。
英語に残した足跡
サミュエル・ジョンソンの『英語辞典』で最も多く引用された作家はシェイクスピアでした。「with bated breath(息をひそめて)」や「a foregone conclusion(初めから分かりきった結論)」といった表現は、日常英語に溶け込んでいます。 なお「別人が書いた」という説は、多くの研究者から少数派の説と見なされています。
シェイクスピアで学ぶ日本語表現
演劇やドラマの話をするときに役立つ日本語を5つ紹介します。
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 息をひそめる | 緊張して静かに待つ | 結果発表を息をひそめて待った。 |
| 分かりきった結論 | 最初から結果が明らかなこと | 彼の優勝は分かりきった結論だった。 |
| 舞台裏 | 人に見えないところ | 舞台裏では多くの人が働いている。 |
| 幕が上がる | 何かが始まる | いよいよ新しい生活の幕が上がる。 |
| 主役を食う | 脇役が主役より目立つ | 新人俳優が主役を食う演技を見せた。 |
練習してみましょう: 知っているシェイクスピア作品(『ロミオとジュリエット』など)のあらすじを、表の表現を2つ以上使って3文の日本語で書いてみてください。書いたら、俳優のようにゆっくり声に出して読んでみましょう。