『モンテ・クリスト伯』の結末まで:『巌窟王』ダンテスの復讐と赦しを追う
無実の罪で投獄された船乗りダンテスが脱獄し、財宝を得て伯爵として復讐に戻るデュマの長編。あらすじ、結末、登場人物、テーマを紹介します。
『モンテ・クリスト伯』は、無実の罪で投獄された船乗りエドモン・ダンテスが脱獄して莫大な財宝を手にし、謎の伯爵としてパリに戻って自分を陥れた三人に復讐する物語です。結末でダンテスは、復讐が行き過ぎたのではないかと迷い始め、最後の敵を赦し、若い恋人たちを結びつけ、自分を愛するエデと共に東方へ旅立ちます。 フランスの作家アレクサンドル・デュマが1844年から1846年にかけて新聞に連載した作品で、最後の一文「人間の知恵はすべて、待て、そして希望せよ、という二つの言葉に尽きる」はよく知られています。
作者デュマと物語の生まれ方
アレクサンドル・デュマ(1802–1870)は、息子と区別して「大デュマ」とも呼ばれるフランスの小説家・劇作家で、世界で最も広く読まれているフランス作家の一人です。 父のトマ=アレクサンドル・デュマ将軍は、現在のハイチにあたるフランス植民地サン=ドマングで、フランス貴族と奴隷の女性の間に生まれ、フランス軍の将軍にまで昇りました。
デュマは一人で書いたわけではありません。協力者オーギュスト・マケが筋書きを提案し、デュマがそれを膨らませる形で多くの作品が生まれ、この小説もその一つです。 マケはのちに作者としての承認を求めて裁判を起こし、報酬の増額は勝ち取りましたが、表紙に名前が載ることはありませんでした。 作品はまず新聞『ジュルナル・デ・デバ』に十八回に分けて掲載されました。 復讐の着想は、パリ警察の記録係ジャック・プシェが書き残した実話、つまり嫉妬した友人たちに密告されて囚われ、のちに財産を得て復讐に生涯をかけた靴職人の話から得たとデュマ自身が述べています。
あらすじ
1815年、ナポレオンがエルバ島を脱出する直前、若い航海士ダンテスはマルセイユで船長への昇進と婚約者メルセデスとの結婚を控えていました。ところが、嫉妬したダングラールとフェルナンが彼をナポレオン派の手先だと密告します。検事代理ヴィルフォールは、ダンテスが託された手紙の宛先が自分の父ノワルティエだと知り、出世を守るために裁判もなくダンテスをイフ城の牢獄に送りました。
六年後、絶望しかけたダンテスは、トンネルを掘り間違えて彼の独房にたどり着いたイタリア人の神父ファリアと出会います。ファリアは八年かけて語学や歴史、科学を教え、モンテ・クリスト島に隠された財宝の場所を伝えます。ファリアが亡くなると、ダンテスはその死体袋に入れ替わり、海に投げ込まれて脱出します。
財宝を手にしたダンテスは島と伯爵の称号を買い、1838年、モンテ・クリスト伯としてパリの社交界に現れます。銀行家になったダングラール、モルセール伯爵としてメルセデスと結婚していたフェルナン、王室検事となったヴィルフォールに、彼は一人ずつ罠を仕掛けていきます。
結末:復讐から赦しへ
フェルナンは過去の裏切りを暴かれて自ら命を絶ち、ヴィルフォールは妻が幼い息子を道連れに毒をあおった後に正気を失います。その子エドゥアールを救えなかったダンテスは、復讐が行き過ぎたのではないかと自問し始めます。 最後の敵ダングラールが悔い改めると、ダンテスは彼を赦して解放しました。物語は、恩人モレルの息子マクシミリアンとヴァランティーヌの再会で幕を閉じます。
主な登場人物
- エドモン・ダンテス:裏切られた若い船乗り。のちのモンテ・クリスト伯で、ブゾーニ神父やウィルモア卿などの別名も使います。
- ファリア神父:牢獄でダンテスに学問を授け、財宝の秘密を託す老神父。
- メルセデス:ダンテスの婚約者。彼の投獄後、フェルナンと結婚します。
- ダングラール、フェルナン、ヴィルフォール:ダンテスを牢獄に送った三人の男。
- エデ:アリ・パシャの娘。ダンテスに奴隷の身から救われ、やがて彼を愛します。
- マクシミリアンとヴァランティーヌ:物語を締めくくる若い恋人たち。
正義か、ただの復讐か
この小説は、希望、正義、復讐、慈悲、赦しをテーマにしており、王政復古からルイ=フィリップの治世に至る時代背景が物語に深く関わっています。 ダンテスは、法が見逃した罪を裁く「神の代理人」のつもりで動きます。しかし彼の計画は、罪のない人々まで巻き込んでいきます。人間が運命の役を演じてよいのか、という問いこそが、長い物語を最後まで読ませる力になっています。
連載当時、この物語はヨーロッパ中の読者を夢中にさせ、批評家ジョージ・セインツベリーは、当時ヨーロッパで最も人気のある本だったと言われていると書きました。 デュマ自身も、生誕200年の2002年に遺骸がパリのパンテオンへ移され、ヴィクトル・ユゴーやエミール・ゾラと並んで眠っています。
日本では『巌窟王』
日本で最初の翻訳は黒岩周六(涙香)による『史外史伝 巌窟王』で、1901年から1902年に新聞『萬朝報』に連載されました。後の翻訳は『モンテ・クリスト伯』という題を使いますが、「巌窟王」の名は今も作品と強く結びついています。 映画やドラマにも繰り返しなり、2024年にはピエール・ニネ主演のフランス映画も公開されました。
『モンテ・クリスト伯』で学ぶフランス語
| フランス語 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| attendre et espérer | 待て、そして希望せよ | 最後の言葉は « attendre et espérer »。 |
| la vengeance | 復讐 | Il prépare sa vengeance. |
| le trésor | 財宝 | Le trésor est sur l'île. |
| le comte | 伯爵 | Le comte arrive à Paris. |
| pardonner | 赦す | Il choisit de pardonner. |
練習: 長いあいだ何かを待った経験を、attendre と espérer を使って短いフランス語二文で書いてみましょう。