『白鯨(モービー・ディック)』はどんな話?メルヴィルの小説をやさしく解説
『白鯨』は、白いマッコウクジラへの復讐に取りつかれたエイハブ船長を描くメルヴィルの1851年の小説です。あらすじ、テーマ、英語の表現を紹介します。
『白鯨(モービー・ディック)』は、アメリカの作家ハーマン・メルヴィルが1851年に発表した小説です。捕鯨船ピークォド号のエイハブ船長が、かつて自分の片脚を食いちぎった巨大な白いマッコウクジラを、取りつかれたように追いかける物語です。 語り手の若い船乗りは、英語で最も有名な書き出しの一つ「Call me Ishmael(イシュメールと呼んでくれ)」で自己紹介をします。発表当時はほとんど売れませんでしたが、今ではアメリカ文学を代表する名作とされています。
海を知っていた作家
メルヴィル(1819–1891年)は捕鯨を内側から知っていました。若いころ太平洋の捕鯨船に乗り、マルケサス諸島で船を脱走し、その冒険をもとに『タイピー』などの人気旅行記風小説を書きました。 『白鯨』では、ただの冒険物語よりはるかに大きなものを目指しました。1820年に捕鯨船エセックス号がマッコウクジラに沈められた実際の事件なども、着想のもとになっています。
白いマッコウクジラ「モカ・ディック」
物語のもとになった材料は、エセックス号の事件だけではありません。白い鯨のイメージは、「モカ・ディック」と呼ばれた白いマッコウクジラにも由来しています。この鯨については、J・N・レイノルズが1839年5月の雑誌『ニッカーボッカー』に文章を書いていました。 メルヴィル自身は1840年12月30日、捕鯨船アクシュネット号の初航海に新米の船員として乗り込みました。この航海は52か月の予定で計画されていました。
ホーソーンとの出会い
メルヴィルは1850年5月1日、作家リチャード・ヘンリー・デイナ・ジュニアにあてた手紙でこの作品について触れ、6月27日にはイギリスの出版者ベントリーにも計画を知らせています。 1850年8月5日、ピクニックの席で作家ナサニエル・ホーソーンと出会い、同じ月の17日と24日には、ホーソーンを論じた評論「ホーソーンとその苔」を雑誌に発表しました。 執筆がもっとも激しく進んだのは、1850年から1851年にかけての冬、マサチューセッツ州ピッツフィールドの農場でのことです。 1851年5月の終わりには、原稿の大部分をアメリカの出版社ハーパーに渡しました。
あらすじ
お金も落ち着きもないイシュメールは、海に出ることにします。ニューベッドフォードの宿で、南太平洋出身の入れ墨の銛打ちクィークェグと同じベッドを使うことになり、二人はすぐに親友になります。 二人はナンタケットから出るピークォド号に乗りこみます。
船が沖に出ると、謎めいたエイハブ船長がようやく甲板に姿を見せます。鯨の骨で作った義足で立つ船長は、マストに金貨を打ちつけ、白い鯨モービー・ディックを最初に見つけた者にやると約束します。この航海の本当の目的は鯨油でもうけることではなく、復讐だと明かすのです。 慎重な一等航海士スターバックは、物言わぬ動物に復讐するなど狂気だと反対しますが、乗組員たちはエイハブの強い意志に引きずられていきます。
船は世界の海をめぐり、ほかの鯨をとり、ほかの船と出会い、モービー・ディックについての警告を聞きます。ついに白鯨を見つけ、三日間の追跡が始まります。鯨はボートを打ち砕き、エイハブは自分の銛の綱に巻きこまれて海に引きずりこまれ、ピークォド号は沈みます。 生き残ったのはイシュメールただ一人。クィークェグが作った棺桶につかまって漂い、別の船に助けられます。
不思議で巨大な本
速い冒険を期待して読むと驚くかもしれません。多くの章で物語が止まり、鯨の生物学や捕鯨のくわしい手順、鯨の絵の歴史、「白」という色の意味などが語られます。 劇の台本のように書かれた章もあります。説教、冗談、哲学、科学が入りまじり、一つの物語というより一つの世界のように感じられる本です。
白鯨は何を表しているのか
白鯨は、自然、神、運命、未知のもの、あるいはエイハブが憎しみのすべてを押しつけたただの鯨など、さまざまに読まれてきました。エイハブの執念は、自分の個人的な戦いに他人を巻きこむリーダーへの警告とも読めます。 人種や宗教をこえたイシュメールとクィークェグの友情は、それとは違う希望のある人間のつながりを示しています。
二つの初版と売れ行き
この小説には、題名も中身も少しずつ違う二つの初版があります。イギリス版は『鯨(The Whale)』という題で1851年10月18日にベントリー社から3巻本で出版され、印刷部数は500部でした。 アメリカ版『モービー・ディック』はハーパー社から1851年11月14日に、635ページの1冊本として出ています。 イギリス版では、神を冒涜するとみなされた1,200語をこえる部分が削られたり書き換えられたりし、さらに結末の「エピローグ」まで抜け落ちていました。イシュメールが生き残ったことを伝える部分です。 売れ行きはさびしいものでした。イギリス版は最初の4か月で300部も売れず、アメリカ版も最初の2,915部のうち約1,500部が11日で売れたあと、翌年は300部を下回りました。
白鯨で覚える英語表現
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| a white whale | 執念の、届きにくい目標 | Fluency in Japanese is my white whale. |
| call me ... | 気軽に名前を名乗る | Call me Sam. |
| go overboard | やりすぎる | Don't go overboard with the decorations. |
| all hands on deck | 全員で取りかかる | It's all hands on deck before the launch. |
| in the same boat | 同じ苦しい立場 | We're all in the same boat this week. |
練習問題: 自分にとっての「white whale」について、「a white whale」「all hands on deck」を使って英語で三文書いてみましょう。