エル・グレコとは?名前の由来と代表作、引き伸ばされた人物像の秘密

「エル・グレコ」は「ギリシャ人」という意味のあだ名。クレタ島出身の画家がトレドで描いた代表作と、細長い人物像が生まれた背景を解説します。

エル・グレコは、ギリシャのクレタ島に生まれ、イタリアを経てスペインのトレドで活躍した画家です。本名はドミニコス・テオトコプロスで、「エル・グレコ」は、イタリア語で「ギリシャ人」を意味する「グレコ」にスペイン語の定冠詞「エル」がついた通称です。 引き伸ばされたようにねじれた人物と、幻想的な色づかいで知られ、表現主義とキュビスムの先駆けともいわれます。

クレタ島のイコン画家として出発

グレコは1541年、ヴェネツィア共和国の支配下にあったクレタ島のカンディア(現在のイラクリオ)に生まれました。 島にはビザンティン美術の伝統が残っており、若きグレコはその流れをくむイコン画家として育ち、1563年にはすでに独立したイコン画家になっていました。

晩年に至るまで、グレコは作品にギリシャ語の本名で署名し続けました。 しばしば「クレタ人」を意味する言葉も書き添えています。 スペインで何十年暮らしても、自分がどこから来たのかを忘れなかったのです。

ヴェネツィアとローマで学んだこと

26歳ごろヴェネツィアに渡り、1570年にはローマに移って工房を開きました。イタリアではティツィアーノやティントレットから、マニエリスムやヴェネツィア派の色彩を吸収しています。 大胆な性格でもあり、システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロの『最後の審判』を認めず、教皇ピウス5世に全体を描き直すと申し出たほどでした。

トレドに根を下ろす

1577年、グレコはスペインのトレドに移り、亡くなるまでそこで暮らしました。 本当の狙いは国王フェリペ2世に仕えることでしたが、作品は王に評価されず、宮廷画家になる夢はかないませんでした。 そのかわり、トレドの教会や修道院から次々と注文を受け、街の画家として名声を築いていきます。

現存する作品のおよそ85パーセントは聖人画を含む宗教画で、10パーセントが肖像画です。 絵画だけでなく、彫刻や祭壇の設計にも関わりました。

代表作『オルガス伯の埋葬』

1586年に注文を受けた『オルガス伯の埋葬』は、現在もっともよく知られる作品です。トレドのサント・トメ教会のために描かれ、今も同じ場所にあります。 1323年に亡くなったトレドの貴族の葬儀を描いたもので、地元の伝説では聖ステパノと聖アウグスティヌスが自ら埋葬したとされています。

画面の下半分には、時代を超えてグレコと同時代のトレドの人々が並び、その中には画家の息子も描かれています。上半分では、死者の魂が天使と聖人でいっぱいの天へと昇っていきます。 ほかに、嵐のような空の下に街を描いた『トレド眺望』もよく知られています。

トレドでの暮らしと晩年の仕事

トレドでのグレコは、かなり優雅に暮らしていたようです。食事の間に音楽家を呼んで演奏させることもあったと伝えられています。 1578年に生まれた息子ホルヘ・マヌエルも画家になって父を手伝い、父の死後は工房を継いで、長年にわたり父の構図をくり返し描きました。

1597年から1607年までの十年間は、とくに忙しい時期でした。大きな注文をいくつも受け、工房は宗教施設のための絵画や彫刻をまとめて制作しています。 肖像画にもすぐれ、1585年の『胸に手を置く騎士』はプラド美術館に所蔵されています。 作家ヘミングウェイは『トレド眺望』を、ニューヨークのメトロポリタン美術館でいちばんの絵だと考えていました。

なぜ人物が細長いのか

グレコは、寸法や比例といった古典的な基準をあえて捨てました。想像力と直観を何より重んじ、芸術の最高の目標は「優美さ」だと考えていたのです。 目の病気(乱視など)のせいで体が長く見えていたという説も唱えられましたが、 画家自身の考え方を知ると、意図して選んだ表現だと見るほうが自然でしょう。

再発見と後世への影響

グレコは1614年4月7日、トレドで亡くなりました。 同時代の人々にはほとんど理解されませんでしたが、20世紀になってピカソやカンディンスキーらの画家と批評家によって再評価され、50年足らずで史上最高の画家の一人とまで言われるようになりました。 ピカソは『アヴィニョンの娘たち』を制作していたころ、グレコの『第五の封印』を研究していたといわれます。 マドリードのプラド美術館では、今も多くのグレコ作品を見ることができます。

エル・グレコで学ぶ日本語表現

表現 意味 例文
時代の先を行く 考え方が時代より進んでいる グレコは時代の先を行く画家だった。
型にはまらない 決まったやり方にとらわれない 彼の絵は型にはまらない。
根を下ろす ある土地に落ち着いて暮らす グレコはトレドに根を下ろした。
日の目を見る 世に認められる 彼の作品は20世紀に日の目を見た。
一目置かれる 能力を認められ尊敬される 今ではピカソにも一目置かれる存在だ。

練習: 「型にはまらない」と「日の目を見る」を使って、好きな芸術家を三文で紹介してみましょう。

エル・グレコで外国語を学ぶ

このテーマの記事 · 名作美術と画家